ら、同名異人の例はあることだ、どうして著者エルンスト・オッペルト氏を、往年の「ちゃちなハムブルグ貿易商」、「ユダヤ人行商人」――憎むべき撥陵遠征隊事件の主犯その人だろうと思う者があろう!
ところで四月二十一日の『ネイション』に下のような投書が載った。
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「ネイション編輯《へんしゅう》足下
朝鮮に関するオッペルトの新刊が紹介されてるのを読んで、私は偶々《たまたま》ある奇怪な事件を想起した。……この海賊的行為のため、故国で入獄の憂目を見たと伝えられるオッペルト自身が、臆面もなく当の事件を解明|上梓《じょうし》するが如きは、実に言語道断の沙汰《さた》といわざるを得ない」。
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署名は往年の「参審」A・A・ヘイーズ、十二年前の上海の輿論がそのままの形で顔を出したわけだが、われわれにとっては、事件の「主謀者」から直接物語って貰えるのだから、何より興味があるわけだ。
オッペルトによると「主犯」の名誉はそっくりアベ・フェロン師に譲られている。そしてアベ・フェロン師は最高の人格者だ、「師をもってすれば物の数にもあらざる人々が、師を蔑視し論難するの甚
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