実に女らしい人であった。神戸のどこか金持のお嬢さんだが、奥さんとしておつき合いしておって誠にりっぱな人だと思う。賢こい人だけれど、武藤さんの言うことを何でも、すなおに聞いて賢こさを少しも表に現わさない。まことに見上げたものであった。
 一体に関西、中京、関東の女を比べてみると、名古屋の女は一番発展家だ。しかし堅実だ。昔から名古屋人は、お金を蓄めるのが非常に上手だが、女もそうだ。恋よりお金の方がいいのだろう。
 そこへ行くとやはり女は江戸っ子でなくてはいけない。京都の女、大阪の女は従順さが買える。しかし、何といっても東京の女はテキパキしてはっきりしていていい。

        「男の世界」と「女の世界」

 また、男と女と比べてみると、何事にも専門的に進んで行く場合には、やはり男でなければダメだけれども、アマチュアとしての程度では女の方がいいと思う。料理屋へ行っても腕のいい料理人は男であるし、仕立屋でもほんとうにうまい一流の仕立屋は男である。料理とか裁縫は女のすることだと思っておったが、最高の技能を発揮するのには男でなくてはダメなようである。だから『女だけで芸術がやって行かれますか』と
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