人間はいくら大人になってもどこかに子供らしい感情を持っているものです。あなたの今面白いとおっしゃったのは、その子供らしい感情からですか。あるいは、大人らしい感情からですか。』
『どっちの感情からも面白いと思ったのです。私は子供にもなり、大人にもなって喜んだのです。それはドイツのフンバアヂングが始めたメルヒェンオパアというようなものなのですね。』
『そんな立派なものですか。』
『いや勿論そんな立派なものじゃありません。併しやがてはそういう所へまで進むのではないかと思われます。宝塚の少女歌劇はフンバアヂングのしたように、日本人に――殊に日本の子供にポピュラアな曲を取り入れる事を第一の出発点にしているようです。それから日本の詞として歌わせるように注意しているようです。近頃浅草の六区などでオペラと称しているものを聞くと日本の詞が伊太利語として歌われたり、仏蘭西語として発音されたりしています。尤もあれらは原曲が向うのものだからやむを得ないという口実もありましょうが、それにしても日本の詞の音楽を余りに無視したしかただと思っています。そこへ来ると宝塚の少女歌劇は立派に日本語を日本語として歌っています
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