轤黷ネければならない。克己は全ての関係中にあつて真の恋愛及び健全なる親としての一条件として教へられなければならない。併しながら自棄は恋愛に於ける完全なる幸福が個人の精神及び一般の人道の成長に資する時説かれてはならないのである。自己離婚の権利も結婚せざる母権も全くこの道徳的見解から批判せられなければならない。結婚の有無に関せず母としての無責任は常に罪悪である。母たるの責任は結婚の如何を問はず常に神聖である。離婚の自由は種々なる感情及び事情が母としての道に横はる様々の障害を除くことは出来ない。併しながらそれはかの他人のために犠牲たることは自己の精神を生かすの道にして、他人を犠牲にするは精神を殺すことである。故に自己の都合よき様に犠牲の問題を決定するの個人は社会に於て無価値なるものであるといふ極めて不合理なる説を打破することが出来る。
 不幸なる結婚に於ては結婚者の一人が他を犠牲に供さなければならないといふことは偏見なき反省の示す処である。行かんとする人は彼を止めんと欲する人を犠牲にする。又止めらるゝ人は彼を制抑する人の犠牲となるのである。時としては他を犠牲とするより自己を犠牲となすことの更
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