C養及び克己が成長の最上条件である。この見解によれば神聖と愛の権利のために説かれたる言辞は悉く『自然の崇拝』である。而して受難そのものがより[#「より」に傍点]高き修養に至るの道である。而しそれは自己の慴伏《しょうふく》によつて到達せらるゝのである。最善の愛は信実と忍耐とである。それのみが独りよく深遠なる精神力を釈放し、人間を神聖の域に結び付ける。結婚に於ける信実は人をして肉慾的の本能と情熱より自由にせしめ、高き意味に於ける人格発展の可能を彼に与へる。然るにかの『自由恋愛』はこれ等の精神状態を発達させない、而して結婚以外の母は生れたる子供に安固たる家庭生活を送らしめず、子供に対して真摯なる責任の感を喚起せざるが故に排斥せられなければならない。かくの如き子供は又情熱によつてのみ生れ出でたるが故に母の愛は責任に面するの時消え去るのである。
 かくの如き禁慾的人生観より云へば私の述べた如くこの見解は極めて自然である。併しながら人生の目的が人生そのものである人は其精神的要求と同じく肉体的要求に対して同一なる尊敬を感ずるのである。斯くの如き人は又不道徳なる肉情が存するが如く不道徳なる禁慾主義が存
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