の根本思想は、個人が恋愛関係によつて最高の幸福を享楽しなければならない[#「個人が恋愛関係によつて最高の幸福を享楽しなければならない」に傍点]といふのではなく、個人の幸福が即がて種族の改善に資するが如く社会が矯正せられなければならない[#「個人の幸福が即がて種族の改善に資するが如く社会が矯正せられなければならない」に傍点]といふのであつた。
『恋愛と結婚』の中に私は一夫一婦――即ち一生を通じての恋愛関係を以て両性間に存する唯一の道徳的関係であると主張する人々はかくの如き道徳律の結果として生ずる多大なる生活力の浪費を無視するものであることを指摘して置いた。若しその生活力が利用せられるなら立派なる子孫を生じ人種の改善に貢献する処があつたかも計られないのである。然るに一方社会の悪分子は何等の道徳律にも束縛せられずして彼等の同族を蕃殖《はんしょく》せしめてゐるのである。かくの如く調子高き理想主義は中世紀の修道院に於けるがごとき同一の結果を生ずるであらう。而して現在の如き社会状態にあつてはかくの如き道徳律は仮令進化の趨勢が疑ひもなく最終の目標として真の恋愛的結合に向ふにもせよ、或はまた結婚如何に
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