に非ずして社会学或は生物学によつて証明せられたる「自然の法則」に準拠するものなり』といふが如き論拠の上に立てられてゐる。かくの如き議論は特に仏蘭西に於てかの離婚しがたき結婚制度の陰影として『自然の法則』の生んだ姦淫を忘れがたいものにするのである。所謂結婚に対するあらゆる弁護はかの『哀れむべき人々の外交術と称するものは真理を偽はり存在せるものを否定することによつて成立す』と云つたラサルレの言葉を確むるものである。かくの如き議論を聞いて人は結婚の攻撃は夢の如く美はしき牧歌を破壊せんとするものであると想像するかも知れない。併《しか》しながら現今の結婚制度は実に寒心すべきものがある。私等は先づ来るべき新制度に伴ふあらゆる危険を予想した上で現今の制度と比較研究の結果|孰《いず》れが更に恐ろしいものであるかを認めなければならない。よし今の社会状態が多くの不徳と不幸との原因でなかつたとしても、問題は『近代の結婚制度は善良にして果してよく社会の需要に応ずるものなりや』と云ふのではなく『奈何《いか》にせば吾人は種族改善の為め現在のそれより更らに有効なる道徳律を発見し得るや』と云ふに存する。『恋愛と結婚』
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