ニを適当に完成するには、女子は男子と同等なる権力を要求するのである。而して女子がこの権利を獲得するまでは『女性主義《フェミニズム》』は尚ほなすべき仕事を有してゐる。併しながら女子が選挙権――単にその狭き政治上の意味に於てのみならず、一般の選択権といふ意味に於て――を得るに準じて彼等はそれを広き人生の舞台に向つて使用する事を学ばなければならない。彼等は女子の力が『秤《はか》るべからざる』価値の創造せらるゝ領域にありて最大なるものであることを学ばなければならない。その価値はたとへ数字に表はさるること能はずとも人道《ヒューマニティー》を改善する上に最も功力多きものである。若し自からの小児が乳母部屋に於て鞭韃せられ或は相互に相打つが如きことあらば平和会議に関して喋々するも婦人にとつてそれが何の益に立つであらう。もし婦人にして哀れむべき独身の境遇より一個の男子を救ふこと能はず、而して男子の生活に調和ある結合を齎《もた》らすこと能はずとせば徒らに倫理会議を口にするもそれが何の益にたつであらう。女性主義はゲーテの二個の格言中に極めて適当なる評言を発見する。『霜を以て自からを暖めんが為め太陽より逃れん
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