8] 探ってみて……、きっと真理は、ごく平凡なところにあると思いますわ。
 けれど末起は、お姉さまをきっと疑わないでしょう。あなたは今、お姉さまの膝のうえにのっている。やさしい、眼は閉じられ開かれるのは、迷いし、その胸と唇。
 折り返し、お姉さまは吉報を待っていますよ。
[#地から4字上げ]愛もて
[#地から2字上げ]方子より

(末起からの返事)
 お姉さま、ずいぶんひどいわ。あんな暢気そうなこと、本気にしてしまって、私、暖爐のなかを一日中掻きまわしたわ。だけど、動くどころか、なんの応えもありません。でも私、なぜお姉さまがああなさったのか――やっと分りましたわ。
 張り詰めて、ガンガン鳴るようにとがり切った神経が、あの夜だけ、お姉さまのお蔭で、ぐっすり休めましたもの。
 あら、そんなこと※[#感嘆符疑問符、1−8−78] どうして、お姉さまをお恨みするなんて、そんなことが……。私の健康を気遣ってああして下さったのに……これほど美しい愛と信実がありまして※[#感嘆符疑問符、1−8−78] ただ私には、うかべたお姉さまの面影を楽しむときがありませんの。でも近いうちに新邸へ越します。そうし
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