たら、暗い気分も払われるでしょうし、いつも野山を越えて、お側にいられるでしょう。それまで、可哀そうな末起をお叱りにならないで……。
お姉さま、慕わしい、うつくしいお姉さま。末起は、お姉さまの永遠に、お腰元ですわ。
[#地から2字上げ]末起より
(方子よりその返し)
末起ちゃん、御免なさいね。あたくしの、可愛くって可愛くって嚥みこんでしまいたいあなたに、あんなことをさせて……。でも、心をわかって戴いて、なによりと思うわ。聡明な、末起ちゃんには予期していたことですけれど、あなたには、あの悩みに洗滌《せんでき》が要りますの。そうでもしないと、末起ちゃんのからだが、保《も》たなくなります。
ところで、あなたは引っ越しをするんですってね。それで、なぜ末起ちゃんの髪が要るのか、その理由が分りましたの。お祖母さまは、いますんで[#「すんで」に傍点]のところで、怖ろしい目に逢うのです。
髪毛《かみのけ》が、湿度によって伸縮するのを、御存じ……。あれを、落し金の動きに応用して、秘密の装置を鍵孔の中につくった人があるの。そうでしょう。髪毛の先に重錘《おもり》をつないで置いて、それから湯を鍵孔に注
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