末起が、お祖母さまを下手人にはしたくない――それは、お姉さまにようく分ります。でもそれには、どうして末起の義父さまがあの部屋へ入ったか、だいいち、その証明が要ると思いますわ。それで末起は、ページを繰りながら朱線のあるところを、よく読んで裏の意味を考えるのです。いいこと……。では、最初のページの、四行目に、
アリスは、なんで絵のない本が役に立つのだろうと、考えた。
それは末起に、決して意味のない本だと思って、軽蔑してはいけないということ。それから、五行目に、
「可愛いダイアナ(猫の名)おまえが、一緒にくりゃ、どんなによかったろう。だけど、空にはまさか、二十日鼠はいないでしょう。だけど蝙蝠なら、捕まえられると思うわ。それは、二十日鼠にたいへん似ているものなの。でも、猫は蝙蝠を食べるかしらん」
そろそろ、アリスは疲れはじめたらしく、夢心地で独り言をいい続けました。
「猫は、蝙蝠を食べるかしら……、猫が、蝙蝠を食べるかしら……」
と、続いて、
「蝙蝠が猫を食べるかしら……」
となったのは、まえの質疑に答えられなかったため、それが大変な間違いになってしまったのです。
今度は六
前へ
次へ
全25ページ中20ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング