う。だが、お祖母さまはなにをした方だ。いけません、ああなって刑をうけるより、より以上の苦しみをなされている。その方に、わざわざ想い出させ苦しめるようなもんだ。末起、おまえはお祖母さんを、そんなに憎いかね」
「あたし……どうして、そんなこと」
末起は思わぬ方向から謙吉に解釈され、ただ狼狽え、釈明を急かれてしまった。それまでは、少女に似合わぬ尖鋭さがあったけれど、そして淡いながら、義父の謙吉に疑惑を感じたのだったけれど……。
「あれは父さま、お祖母さまがそうしろと仰言ったんですわ」
「なに、お祖母さまが……」
とたんに、謙吉の頬がぴりっと顫えた。血の気が、唇から爪先までもなくなり、いいだしたのも、よほど経ってからだった。
「では、お祖母さまが、どうしたというのだね。口が、自由になったのか、指か……」
「いいえ」
「では、どうなったのだ※[#感嘆符疑問符、1−8−78]」
末起に、もしそのとき裕りがあったならば、義父の混乱や狼狽のさまを、ことに、そうでないといわれて溶け弛んだときを、心の鏡のように見て取れたろう。しかし、末起に説明をされると、また旧のように謙吉は静かになった。
「そうか
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