れを見ると、十四郎は鉄弓を穏やかに廻しながら、
「おい、肝《きも》を喰うとよいぞ。もう蒸れたろうからな。あの病いにはそれが一番ええそうなんじゃ」と時江に云ったが、彼女はチラリと相手の顔を見たのみで、答えようともしなかった。それは、いかにも無意識のようであって、彼女は、自分の夢に浸りきっていて、ものを云うのも覚《おぼ》つかなげな様子だった。ところが、そうしてしばらく、毛の焦げるような匂いが漂い、チリチリ捲き縮まってゆく、音のみが静寂を支配していたが、そのうち、時江はいきなり身体をもじらせて、甲高い狂ったような叫び声をたてた。
「ああ、それじゃ、稚市《ちごいち》の身体を喰べさせようって云うの。まるで、この仔鹿《かよ》の形は、あの子の身体にそっくりじゃないの。ほんとうに、じりじり腐ってゆくよりも、いっそひと思いに、こんなふうに焼かれてしまったほうがましだわ。もう、そうなったら、烏だって喰べやしないでしょうからね。山猫だって屍虫《しでむし》だって、てんで寄りつかないにきまってますわ。大兄さん、いったい肝ぐらい喰べたって何になるのさ」
 時江はおりおりこのように、何かの形にあれを連想しては、心の
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