汚されてはいなかった。しかし、それ以外の鹿子《かのこ》色をした皮膚は、ドス黒くこびりついた、血に塗《まみ》れていて、ことに半面のほうは、逃げようと悶えながら、岩壁に摺りつけたせいか、繊維の中にまで泥が浸み込み、絶えず脂《あぶら》とも、血ともつかぬようなものが、滴《したた》り落ちていた。それであるから、仔鹿《かよ》の形は、ちょうど置燈籠を、半分から截《た》ち割ったようであって、いくぶんそれが、陰惨な色調を救っているように思えた。
 十四郎は、熱した脂肪の跳《は》ねを、右眼にうけたと見えて、額から斜《はす》かいに繃帯していたが、そのかたわらに仔鹿を挾んで、くら、喜惣、滝人の三人が、寝転んでいる時江と向き合っていた。するとにわかに松|薪《まき》が燃え上がり、室《へや》中が銅色に染まって明るくなった。そして、暗闇があった所から、染めたくらの髪や舌舐《したな》めずりしている喜惣の真赤な口などが、異様にちらつきだしたかと思うと、仔鹿の胴体も、その熱のためにむくむく膨れてきて、たまらない臭気が食道から吹きはじめると、腿《もも》の二山の間からも、透き通った、なんとも知れぬ臓腑の先が垂れ下がってきた。そ
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