し》使いのヒューリングがしきりと喋っている。なかには、海豹、海驢《あしか》、緑海豹《グリーン・シール》など十匹ほどのものが、鰭《ひれ》で打ちあいウオーウオーと咆《ほ》えながら、狭いなかを捏《こ》ねかえすような壮観だ。
「じつは、なんです。これは、さるところから纏《まと》めて手に入れまして……、さて、訓練にかかったところ、大変なやつが一匹いる。どうも見りゃ海豹《あざらし》ではない。といって、膃肭獣《おっとせい》でもない、海驢《あしか》でもない。海馬でもなし、海象《ウォーラス》でもない。さだめしこれは、新種奇獣だろうてえんで、いちばん折竹の旦那にご鑑定をねがったら、きっとあの不思議な野郎の正体が分るだろう……」
というところへ「これはご苦労さんで」と、親方のウィンジャマーが入ってきた。ウィンジャマーは、きょう折竹の連れである自然科学博物館の、ケプナラ君とは熟知の仲である。ぺこぺこ頭をさげて折竹に礼をいってから、おいキャプテンと、ヒューリングに言った。
「こりゃね、一つお前さんに仕方|噺《ばなし》をして貰おうよ。海獣《けもの》の訓練の順序をお目にかけてからでないと、どんなにあの野郎が手端に
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