するために大変な筋書を書く──というような奴が、ゴロゴロしていますから。そこへゆくと、あっしらのは実業《ビジネス》で……」
と、これがルチアノの帰りしなの台辞《せりふ》だった。
二人が帰ると、ギャングという初対面の怪物よりも、なにを彼らが企てつつあるのか、陰の陰の秘密のほうに心が惹《ひ》かれてゆく。
極洋──そこにルチアノ一味がなにを目指している※[#疑問符感嘆符、1−8−77] いわば変態ではあるが一財閥ともいえる、ルチアノ一派の実力で何をしようとするか※[#疑問符感嘆符、1−8−77] またそれがあの手紙の主とどんな関係にあるのだろう※[#疑問符感嘆符、1−8−77] と思うと、イースト・サイドの貧乏窟でせっかくの秘密をいだきながら、ギャングの圧迫のためうち顫《ふる》えている、一人の可憐な乙女が想像されてくる。
未知の国売物──それと、ルチアノ一味のギャングとのあいだには、見えない糸があるのではないか。
行ってみよう、彼はやっとその気になった。が「老鴉《オールド・クロウ》」というその酒場へいってみると、すでに日も過ぎたが、それらしい人影もない。見えない秘密、いや、逸してし
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