にゃ真面目な稼ぎの一つくらいはしますからね。先生にだって一生楽に暮せるくらいの、お礼は差しあげるつもりなんですよ。ねえ、先生ったら、うんと言って……」と、それでも黙っている折竹に焦《じ》れたのか、それともフローの本性か、じりじりっと癇癪《かんしゃく》筋。
「じゃ、私たちの仕事なんて、お気に召さないんだね」
「マア、言やね」と折竹はハッキリ言った。すると、扉のそとでコトリコトリと足音がする。いるな、ルチアノの護衛、代理殺人者《トリッガー・マン》のジップ[#「ジップ」は桃源社版では「ジッブ」]か※[#疑問符感嘆符、1−8−77] と思ったが顔色も変えない、折竹にはルチアノも弱ったらしい。
「ご免なすって。牝の蹴合鶏みたいな阿魔《あま》なんで、とんだことを言いやして。とにかく、この問題はお考え願っときましょう。いずれは、うんと言って頂かなきゃルチアノの顔が立たねえが、そんな強面《こわもて》は百万だら並べたところで、先生にゃ効目《ききめ》もありますまい。なア、俺らが来てもビクともなさらねえなんて……、フロー、お立派な方だなア」
 折竹は、その間ものんびりと紫煙にまかれている。代理殺人者《トリッ
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