どこかの殴りこみに連れてゆくのか」
「マア、お聴きなすって」と、ルチアノはかるく抑え、
「で、その船は北へ北へとゆく。すると、そのどこかの氷のなかにだね。ぜひ先生のお力を拝借せにゃならねえものが、おいでを、じっと待ってるんですよ」
「では、そこは何処なんだね。また、僕の力を借りるとは、何をすることなんだ?」
「どうか、それだけはお訊きにならねえで。ただ、申しあげておくのは、けっして邪《やま》しいことじゃない。法律に触れるようなことでは絶対にないという……その点だけはご安心願いたいもんで」
 折竹は、ただただ呆れたように瞬《しばたた》くだけ。ギャングども、大変なことを言ってきやがった。俺の力を、借りたいというからには探検であろうが、いま、年収八千万ドルといわれるルチアノの仕事なら、あるいはそれが途方もないものかも知れぬ。どこだろう、北へ北へといって氷のなかに出る※[#疑問符感嘆符、1−8−77] はてなと、思いめぐらすが、見当もつかない。ただ、匂ってくるのは黒暗々たる秘密のにおい。
「ねえ、先生、ご承知くださいましなね」
 と、フローが間に耐えられないように、
「私たちだって、偶《たま》
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