あがるという嬉しい勘定になる。ところがです、あの“Gori−Nep《ゴリ・ネプ》”の野郎ときたら手端にも負えねえ」
「“Gori−Nep《ゴリ・ネプ》”って?」と折竹がちょっと口を挟《はさ》んだ。
「つまり、野郎は演芸用海豹《ネップ》仲間のゴリラですからね。マア、この|鉄葉ズボン《ティン・パンツ》の穴をみてくださいよ。たいていの海獣《けもの》なら二、三度で噛《か》み止みますが、あいつの執念ときたらそりゃ恐ろしいもんで……。ええ、その大将はすぐ参ります。じつは、野郎だけが独房生活で」
その、通称“Gori−Nep《ゴリ・ネプ》”という得体のしれぬ海獣を、まもなく折竹はしげしげとながめはじめた。身長は、やや海豹《あざらし》くらいだが体毛が少なく、まず目につくのがおそろしく大きな牙。おまけに、人をみる目も絶対なじまぬ野性。ついに折竹にも見当つかずと見えたところへ「あれかな」と、連れのケプナラを莞爾《かんじ》となって、ふり向いた。
「ケプナラ君、君はエスキモー土人がいう、“A−Pellah《アー・ペラー》”を知っているかね」
「アー・ペラー※[#疑問符感嘆符、1−8−77] いっこうに知らん
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