できたのは……まだ新しく、白人侵入当初だったろう。その犠牲者が、所々に完全な屍蝋《しろう》となっている。それに反して、グァラニー土人のは一つも見当らない。つまり、白人における化石素《ペトリ》説が、ここに完全に立証されたわけだ。
ここは、四季を通じて一定の温度を保ち、寒からず暑からず至極《しごく》凌《しの》ぎよい。食物は、盲《めし》いた蝦《えび》、藻草の類。底には、ダイヤモンドがあるが無用の大長物。さて、本日出口をさぐりさぐりやっと地上へ出たが、やはりパ、ア両軍の対峙《たいじ》は続いている。ダイヤをやって、ロイスへの伝達を頼んだが、あの男はやってくるだろうか。
ああ三上と、しばらくロイスは咽《むせ》び泣いていた。おそらくこれが彼の絶筆であろうか。なお、地図には祈祷台《トラスコロ》とか、鉄の門《プエルタ・デ・イエロ》[#ルビは「鉄の門」にかかる]とか目印が記されてあるが、おそらく、当時と今とは道がちがっているだろう。しかしこれで、水棲人の謎が解けたのだ。
ジメネス教授がみた女の姿は、たぶんエミリア・ヴィダリ嬢だろうし、また沼地から現われた化石|屍蝋《しろう》をみて、水棲人|覗《のぞ
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