ば、水棲人といえるものになって沼の底へはいったにしろ、もう三上は到底《とうてい》生きちゃいまい」
「ええ、何のこった?![#「?!」は一文字、第3水準1−8−77、231−10]」とカムポスは煙にまかれたように、
「君はよく、水棲人というと笑ったじゃないか。人間の三上がどうして沼の底へ入りそして生きられるか――君に、それが分ったのかね」
「分ったかもしらん。あれは、君はともかくジメネスも見ている。僕は、水棲人が実在するものとして、考えている」
その奇怪きわまる折竹の言葉が、それから十日ばかり後に実現することになった。それまでも、あるいは地震計を据《す》えて微動のようなものを計ったり、土人に、オムブのような浮く樹を運ばせては、いくつも沼地に投じ足掛りをつくっていた。目標は、カムポスが三上に会った地点――五本の大蕨《おおわらび》。なお、それに加えて千フィートあまりの、藤蔓《ふじづる》が三人分用意されている。
「これから、僕ら三人は沼の底へ、もぐってゆく」
と、指令をいうような沈痛な語気の折竹に、ロイスもカムポスも唖然《あぜん》となってしまった。泥亀《すっぽん》でさえ、精々十尺と
前へ
次へ
全49ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング