空しかろうとも「蕨の切り株」へ往ってと、熱心に一日中折竹を説いて、ついにグラン・チャコ行きを承知させてしまったのである。そうして、カムポスを加えた三人の者が、「蕨の切り株《トッコ・ダ・フェート》[#ルビは「蕨の切り株」にかかる]」へとリオ・デ・ジャネイロを発《た》っていった。
永世変りゆく大迷路
ジメネス教授が、「蕨の切り株」をとり巻く湿地を調査して、まるで海図みたいに足掛りの個所《かしょ》を記入した地図がある。それが、米国地理学協会にあったのが大変な助けとなって、ともかく難行ながら「蕨の切り株《トッコ・ダ・フェート》[#ルビは「蕨の切り株」にかかる]」にでたのである。それまでは、プォルモサの密林ではアメリカ豹《ジャガール》[#ルビは「アメリカ豹」にかかる]の難、草原《パンパス》へでればチャコ狼《アガラガス》[#ルビは「チャコ狼」にかかる]の大群。グァラニー印度人《インディアン》百名の人夫とともに、一行はいい加減へとへとになっていた。しかし、はじめて見る「蕨の切り株」の景観は……。
ただ渺茫《びょうぼう》涯《はて》しもない、一枚の泥地。藻や水草を覆うている一寸ほどの水。陰
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