《ほ》れやがって?![#「?!」は一文字、第3水準1−8−77、225−13]」
と折竹は呆れかえるような思い。いまの、カムポスの失策が明らかに故意であることは、別に、本人に問いただすまでもない。一目惚れというかなんて早いやつだと、暫《しばら》く二人を見くらべながら呻《うな》っていたのだ。しかし、その翌日すべてが明らかになった。
約束どおり、翌日ロイスがカムポスを訪ねてきた。彼女が、五十万ミルの大勝負を引きうけたというのも、事情を聴いてみれば成程《なるほど》とうなずける。きょうは、瀟洒《しょうしゃ》な外出着であるせいか、白いロイスがいっそう純なものにみえる。
「折竹さん、あなたは三上重四郎というお国の医学者を、ご存知《ぞんじ》でいらっしゃいますね? パタゴニア人に保護区政策《リザーヴェーション》をとれと、アルゼンチン政府と喧嘩をした……」
「知ってますとも。去年パタゴニアで行方不明になった……」
「いいえ、それがパタゴニアではなかったのです。それからあのう、三上が学生時代に発表した『Petrin 堆積説《ペトリン・セオリー》』も、折竹さんはご存知でございましょう」
三上重四
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