ンデ》を折ってやっとこさで掻きよせた。手にとると、なんか葉っぱの化石みたいなもん。それが、二つに合わさって藻で結えたなかから、現われたのがこのダイヤモンドだ」
そこまで言うと、カムポスは睨《ね》め廻すような目で、あたりをぐるっと一渡りみた。
「さあ、そこまで言《い》や、納得がついたろう。その水棲人が、広茫千キロ平方もある『蕨の切り株』の、一体どこから現われたかというにゃ、俺に目印がある。どうだ、諸君はそれをいくらに踏む?![#「?!」は一文字、第3水準1−8−77、223−3]」
声がない。ようやく、カムポスの額に青筋が張ってきたころ、一隅から美しい声がかかった。
「五十万ミル。あたくし、その程度ならお相手しても宜《よろ》しゅうございます」
そう言って、まっ白な胸をチラ付かせながら、喧騒の極に達した人波を、かきわけてくる。カムポスは、息を引いたまま白痴のような顔で、現われたその人をぼんやりとながめている。ああ、さっき彼が白百合のようにみた女性。
亡霊か、水棲人か
「承知しました」と、目をその女性の顔へ焼きつけるように据《す》えたまま、ちょっと上体をかがめてカムポス
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