いますよ」にかかる]」
すると、カムポスはそれを遮《さえぎ》って、違うと叱《しか》るように言った。
「あれじゃない。ホラ、あの右にいる黒いドレスの方だ。あれは、まさかここの妓《こ》じゃあるまい」
「ほう、あの方」とチップを貰ったボーイが、にこっとなって言った。「あの方は、グローリァ・ホテルにご滞在中とかでございます。ここでは、たまにルーレットをおやりになるくらいのもんで、マアこんなところへ何でお出でになっているのかと、手前どもも不審に存じあげておりますんです」
その婦人は、もう娘という年ごろではないかもしれぬ。面長《おもなが》で、まさに白百合とでもいいたい上品な感じは、まったく周囲が周囲だけに際だって目立つのである。カムポスは、妙に熱をもったような瞳でじっとその婦人をみていたが、まもなく、運定めをする賭け場へはいっていった。
魔境「蕨の切り株《トッコ・ダ・フェート》[#ルビは「蕨の切り株」にかかる]」
そこは、人間の運がいろいろに廻転し、おい、奢るぞ《ヴォツセ・ケル・マタ・ビツシヨ》[#ルビは「おい、奢るぞ」にかかる]――と勢いよく出てくるのもあれば、曲ってる《ホー
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