きうけてやった。
リオでは、「恋鳩《ポムピニヨス・エナモール》」の賭博場《キヤジノ》が最大である。折竹は、そこへ兼ねて紹介されていたが、ここで、困ったのがカムポスの処置。なにしろ、軽口師でございと大嘘をいって、あげくの果に追いだされた彼のこと。しかし、カムポスはご心配なくと、自信あるのか洒々《しゃあしゃあ》たるものだ。まず、鼻下の細|髭《ひげ》を剃り落しもみあげを長くして、これなら、三日|軽口師《ガルガーンタ》の「鼻《ナリシス》のカムポス」とは、誰がみようと分るまいというのである。そうして、その翌夜「恋鳩」へいった。
歓楽地、リオへ遊ぶ一等船客級相手のナイトクラブ――。財布の底まで絞りにしぼって、オケラになったらまたお出でというのが、此処だ。したがって、リオの歓楽中いちばん暗黒のものが、賭博場《キヤジノ》をはじめ洩れなく揃《そろ》えられている。
「君、一丁賭くか《ヴオツセ・ケル・アポスタール》[#ルビは「君、一丁賭くか」にかかる]」そんな声が、はやとっ突きの玉転がし場《ポーチャ》[#ルビは「玉転がし場」にかかる]からも響いてくる。婦人の、キラキラかがやくまっ白な胸、脂粉、歌声、ル
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