という、ごくごく悪い意味になるよ」
「チェッ、縁起でもねえ」と、舌打ちはしたが自信は崩《くず》れぬばかりか、カムポスが大変なことを言いだしたのだ。
「とにかく、俺は俺の考えをあくまでも押し通す。そういう気力には、逃げようとする運までも、寄ってくるというもんだ。で、大将にたいへんなお願いだがね、俺は、ここでいちばん運試しをしようと思う。一番先にある運をつかまえてやろうと思うんだ」
「それには――」
「大将に金を借りる。それで、俺は今夜、賭博場《キヤジノ》へゆく」
折竹は、しばらくカムポスの顔をじっと見まもっていた。鉄面皮というか厚かましいというか、しかし、こういうことを些《いささ》かの悪怯《わるび》れさもなく、堂々と、些細《ささい》の渋ろいもなく言いだす奴も珍しい。気に入った。こりゃ、事によったらカムポスに運がくる。これで、この泥坊が足を洗えりゃ、俺は一つの陰徳をしたというもんだ。
なにしろ、独り身で金の使いようもないうえに、週給五百ドルをもらう折竹のことであるから、たかが、千ドルや二千ドルなら歯牙《しが》にかけるにも当らない。よろしいと、彼はカムポスの申出でを、きっぱりと引
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