、折竹はけっして厭がらなかったろう。いまは、意気投合というか絶妙な気合いで、二人の仲が完全に結ばれてしまったのである。たぶんカムポスは当分の食客を、折竹のいるこの室ですることになるだろう。とその夜、二日酔退治にまた酒となった席上。
「じつは、大将に聴いてもらいたい話がある」と、なにやらカムポスが真剣顔《まがお》に切りだした。
「それはな、ゆうべの動物富籖《ビッショ》の一番違いのやつさ。あれから、俺はとっくりと考えてみた。するとだよ。あの当り籖はガラガラ蛇札《カスカヴェル》の、五九六二一番、俺の札が、一番少なくて六二〇番。と、そのもう一番で上りという意味から考えて……なんだか俺はいま途方もないような、生涯に一度ともいう大運に近付いているんじゃないか――とマアそんな風に考えられてきたのだ」
「担《かつ》ぐじゃないか」と折竹は面白そうに笑って、「だが、俺の国の判じようだと反対になるがね」
「なんでだ」
「つまり、俺の国でいう一番違いという意味は、運の、じき側までゆくがどうしても追い付けない、その、たった一番だけの距離をどうしても詰められない、とうとう、追っ付けずに一生を終ってしまう
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