パゲタ島からにおう花風のなかで、動物富籖《ビッショ》の発表を待ちながら酒杯を重ねていった。折竹は、もう泥のように酔ってしまっている。
「ううい、動物富籖《ビッショ》を一枚、てめえ大切候《だいじそう》に持ってやがって……。おいカムポス、俺はなんだか、可笑しくって仕様がねえ」
「ハッハッハッハッハ、なけなしの俺が一枚看板みたいに、動物富籖をもっているのが、そんなに可笑しいか。だが、俺だって当ると思っちゃいないよ。易《うらな》いだ。未来を卜《ぼく》すには、これに限るよ」
やがて、十二時が近付くにつれ、しいんとなってくる。おそらく、動物富籖をもたぬものは一人もあるまいと思われるほど、この富籖には驚くべき普遍性がある。やがて、ラジオから当り番号が流れはじめた。そのうち、最高位の五万ミルの当り籖が、カムポスの持っているガラガラ蛇札《カスカヴェル》のなかにあるという、声に続いて番号の発表。五九六二一番。――とたんに、カムポスが、ううと呻《うめ》いたのである。
「どうした、カムポス、当ったのかい」
「一番ちがい、大将、これをみてくれよ」
みると、カムポスの札はたった一番ちがいで、五九六二〇
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