s思議な青い色がのぼっている。そして、それは一足ごとが生命の瀬、なんだか故郷が思われ、孤独の感が深くなってくる。やがて四人は、すぐ大烈風へでる岩陰にかたまって、この魔境をまもる大偉力をながめていた。
 まさに、カリブ海の颶風《ハリケーン》の比ではないのだ。それは、※[#「風へん」に火を三つ、174−12]《ひょう》という疾風の形容より、むしろもの凄い地鳴りといったほうがいいだろう。
 飛ぶ氷片、堆石の疾走――みるみるケルミッシュに絶望の色がうかんでくる。
 すると、この難関をあくまで切り抜けて、ぜひ魔境に入り九十九江源地《ナブナテイヨ・ラハード》の、 Zwagri 《ツワグリ》の水源をふさがねばならぬ折竹は……。しばし、目をとじていたが、ポンと手をうって、
「ある、名案がある」とさけんだ。
「えっ、一体どんなことがあるんだ?」
「それはね、氷河の表面をゆかず底をゆくことなんだ。たとえ、どんな大科学者がどんな発明をしようと、たとえば、千ポンドの錘《おも》りをつけようと、この風のなかは往けぬよ。しかし、氷罅《クレヴァス》をくだって洞を掘ったら、どうだ」
「なるほど」ダネックもともども叫んだ
前へ 次へ
全53ページ中43ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング