行ったのか、いやいや、あすこへは決して行けるわけがないと、心では打ち消しながらやはり訊かずにはいられない。
「君が、まさか往《い》ったのではないだろうね」
「いや、往けばこそだよ。あすこは、米国地学協会《ナショナル・ジェオグラフィック・ソサエティ》のダネック君が、ここ数年間|執拗《しつよう》な攻撃を続けていた。僕は、その最後の四回目のとき往ったのだが……そのときの、想像を絶する悲劇のさまを君に話したい。じっさい僕も、そのときの衝撃で休養が必要になったのだ」
 といわれ、はじめて気がついたように折竹をみると、色こそ、※[#「けものへん」に果、148−9]※[#「けものへん」に羅、148−9]《ローロー》の※[#「けものへん」に栗、148−9]※[#「けものへん」に敕、148−9]《リューシ》のような夷蛮《いばん》と異らないが、どこかに影がうすれたような憔悴《しょうすい》の色がある。これは、きっと肉体的な衝撃《ショック》よりも精神的なものだろうと、思うとともに期待のほうも強まってくる。彼はたしかに、なにか想像もできぬような異常な出来事に打衝《ぶつか》ったにちがいない。
 ところでまず、 L
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