アと大嘘をこき混ぜて、マコンデの部落へいい触れさした。つまり、ここが行ってはならない危険な場所になったということを、帰りしなに触れさしたわけだよ。しかし、俺とその男のあいだには、かたい約束ができていた。いいか、俺はどんな蛮地にいようとも、立派なドイツ国民として行動して見せるのだ」
 この今様ロビンソン・クルーソーがなにを言いだすのだろうと、一同は興味深く顔をのぞき込んだが、斉《ひと》しくのっぴきならぬ危険が起りそうな予感を覚えた。バイエルタールは、そしらぬ顔つきでお喋りを続ける。
「それはね、万一事ある場合、たとえば英仏相手の戦いがおこった場合、まず青《ブルー》と黒《ブラック》ニールの水源をエチオピアでとめてしまう。それから、俺は白《ホワイト》ニールにでて上流を閉塞する。と、どうなる?![#「?!」は一字] エジプトの心臓ナイル河の水が、底をみせて涸々《からから》に乾《ひ》あがるだろう。むろん灌漑水《かんがいすい》が不足して飢饉《ききん》がおこる。舟行が駄目になるから交通は杜絶する。そうなって、澎湃《ほうはい》とおこってくる反乱の勢いを、ミスルの財閥や英軍がどうふせぐだろうか」
 折か
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