[クと二人だけと思ったところへ、意外にもマヌエラが加わるし、ヤンが追ってくる。そうして、絶えずマヌエラの美しさをみていると、この探検は、じつに悪魔の尿溜《ムラムブウェジ》[#ルビは「悪魔の尿溜」にかかる]攻撃にあるのではなく、ヤンを除く、天与のまたとない機会のように思われてきた。密林、鰐《わに》のいる河、野獣、毒蛇。ここでは、下手人に代ってくれるあらゆるものが豊富だ。
 と、その考えが、やはりヤンにもあるらしい。そうして、二人は胸に敵意をひめながら、どうやらさいしょの意図とはちがってしまった探検隊が、数日後はコンデロガを発ったのである。
 ところで、悪魔の尿溜《ムラムブウェジ》[#ルビは「悪魔の尿溜」にかかる]攻撃の進路であるが、それは、西方、南方の境界部はコンゴの「類人猿棲息地帯《ゴリラスツォーネ》」、北は、危険な流沙地域である大絶壁にかこまれ、わずか東のほうに密林帯が横たわっている。ところが、これまでの数回の探検隊とも、そこへはいると同時に消息を絶ってしまうのだ。まったく、木乃伊《ミイラ》取りが木乃伊というあの言葉のように、あとからあとからと続いても一人の生還者もない。しかし一同は
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