Aともかくその道をゆくことにした。
 二百の荷担ぎ――それに、車や家畜をふくめた長蛇の列が、イギリス駐屯軍の軍用電線にそうて、蟻塚《ありづか》がならぶ広漠たる原野を横ぎってゆく。土の反射と、直射で灼《い》りつくような熱気には、騾《らば》の幌車《ほろぐるま》にいてもマヌエラは眠ってしまう。やがてゆくと、白蟻が草を噛《か》みきったあとがある。兵隊蟻の、襲撃を避けるため不毛の地にしてしまう。白蟻がちかければ沢がちかいのだ。気のせいか、草の丈がだんだんに伸びてゆく。間もなく、第一日の夜営地になる、うつくしい沢地があらわれたのだった。
 水際には、蜀葵《たてあおい》やひるがお[#「ひるがお」に傍点]のあいだにアカシヤがたっている。水は、一面に瑠璃《るり》色の百合をうかべ肉色のペリカンが喧《やか》ましい声で群れている。マヌエラは、こんな楽園が荒野のなかにあるのかと、いそいそと水際を飛びあるきはじめた。そこへ、カークが記憶があるといいだした。
「その沢から、あの藪地《ブッシュ》を越えて、ほぼ十マイルもいったところが、ドドの発見地なんだ。おいドド久しぶりで故郷《くに》へかえろうぜ」
 しかしドドは、マ
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