A野生動物がどこにあるだろうか。つかまって、環境がちがったときはどんな生物でも、食物をとらなかったりして郷愁をあらわすものだが、それがドドには不思議にもないのだった。
 すると、カークをふり向いてアッコルティ先生がいった。
「まだ捕獲した場所を聴いてなかったね。いったい、このドドをどこで見つけたんだ?」
「それが、ほぼ東経二十八度北緯四度のあたりです。英《イギリス》領スーダンと白《ベルギー》領コンゴの境、……イツーリの類人猿棲息地帯《ゴリラスツォーネ》から北東へ百キロ、『悪魔の尿溜《ムラムブウェジ》[#ルビは「悪魔の尿溜」にかかる]』の魔所へは三十マイル程度でしょう」
 悪魔の尿溜《ムラムブウェジ》[#ルビは「悪魔の尿溜」にかかる]――それを聴くと同時に、一座はしいんとなってしまった。ただ、屋根をうつ大雨の音だけが轟《とどろ》いている。
「そうか、悪魔の尿溜のそばか――」
 アッコルティ先生もここまで来ると、あっさり断念《あきら》めたように投げやりな口調になった。ドドを、悪魔の尿溜と組合せることは、もう科学者の領域ではなかったからである。
 それから先生は、ドドのために急遽《きゅうきょ
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