ュ達がなく脳量がない。したがって、智能の度が低いという原人骨同様だ」
原人という言葉にどっと部屋中が騒がしくなった。誰よりも、マヌエラがまっ先に質問をした。
「じゃ、ドドが原人なんでございますね。とうに、数百万年もまえに死滅しているはずの……」
「とにかく、人間黒猩々の雑交児という説に、これはむろん並行していえると思うね。いや、わしは断言しよう。古来、いかなる蛮人にもこれほど下等な頭骨はない――と」
生きている原人、血肉をもった原始人骨――まさに自然界の一大驚異といわなければならない。
では、ドドはどうして生まれ、どこから来……、また純粋の人間とすればどうして数百万年も、固有のかたちが変えられずに伝わったのだろうか。
でまず、ドドを人獣の児として考えてみよう。そうすると、なぜ群居をはなれて彷徨《さまよ》っていたのだろうか。捨てられたか……追放されたか……? あるいは、ずうっと幼少時から孤独でいたとすれば野獣や、王蛇《ボア》が横行する密林でぬけぬけ生きられるわけはない。また、故郷のジャングルをしたう郷愁といったものも、ドドには気振《けぶ》りにさえもみえないのだ。
郷愁を感じない
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