竄キいという。そして苦悶《くもん》が募《つの》って来て堪《た》えられなくなると“Hyraceum《ヒラセウム》”を甜《な》めにきて緩和するというのだ。ヒラセウムとは、岩狸《ハイラックス》が尿所へする尿の水分が、蒸発した残りのねばねばした粘液で、カークはこのヒラセウムのある樹洞《ほら》のまえに、陥穽《わな》を仕掛けようとしたのであった。
「僕は陥穽《わな》をにらんで四昼夜も頑張っていました。すると、五日目の昼になってとうとうやって来ました。それが、なん歳ぐらいのものか藪の密生で分りませんが、とにかく、ぴしぴし枝を折りながら樹洞《ほら》のほうへやってくる。やがて、えらい音がしてどっと土煙があがりました。しめた、生きたゴリラなら十万ドルもんだと、さっと土人と一緒に勢いよく飛びだすと……どうでしょう、たしかに落ちたはずのゴリラの真正面に向きあってしまったのです。しかし、すぐ相手は四足で逃げ出しましたがね」
「ほほ、陥穽《わな》に落ちたのがそのゴリラでないとすると……ドドかね」
「そうなんです、しかし、覗《のぞ》きこんだときはさすが驚きましたよ」
「そうだろう。君みたいな……、コンゴ野獣の親戚《
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