Nあまりもモザンビイクで暮すうちに、彼はカークという密猟者と親しくなった。次いで、よくカークをつれて奥地へゆく、アッコルティ先生とも知りあいになったわけである。しかしいま、ちょっと南|阿《アフリカ》から寄港した先生を、なぜ座間が引きとめているのか。たしかに、なにかの驚くべきものをアッコルティ先生に、みせようとしているのは事実であるが、一体なんであろう?![#「?!」は一字]
折からそこへ、扉があいて若い男が姿を現わした。一見、黒白混血児とわかる浅黒い肌、きりっとひき締った精悍《せいかん》そうな面《つら》がまえ、ことに、肢体《したい》の溌剌《はつらつ》さは羚羊《かもしか》のような感じがする。
ジョジアス・カーク――国籍《せき》は合衆国《アメリカ》だが有名なコンゴ荒し――禁獣を狩っては各地へ売る、白領コンゴのお尋ねものの一人だ。
カークはお待ち遠さまと微笑んで見せて、右手を扉のそとにだしたまま閾《しきい》から入ってこない。やがて、彼の手にひかれてこの室内へ、まったく予期以上とばかりアッコルティ先生が目をみはる、世にも不思議な生物がはいってきたのだ。まったく、そのときの先生の驚きようと
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