連らねた線が、姉さんの脳髄から跳ね出した火花なのでした。判りませんか……鉄管の先端から始まって、霙《みぞれ》の溶水で下へ伸びて行く氷柱《つらら》がそれなんですよ。しかし、それ以前に一つの仕掛を用意しておく必要がありました。と云うのが一巻の感光膜《フィルム》でして、それを鉄管から動力線までの垂直線より少し長めに切って、その全長に渉って直線に一本引いた膠剤の上に、アルミニウム粉を固着させておいたのです。さてそれから、その側を内にして巻いた端に輪形を作ったのですが、その一巻の感光膜《フィルム》を短剣の発見場所だった紙鳶に結びつけて、飛ばせました。そして、感光膜の輪を鉄管の先端にうまく篏《は》め込むと同時に、鈎切《がんぎり》につけたもう一本の糸を操《あやつ》って感光膜《フィルム》を結びつけた糸を切り、更に、その鈎切で、垂直下に当る動力線の一点に傷をつけたのです。で、この仕掛で、頭上の大鐘に何を目論《もくろ》んだと思います?」
「サア。」イリヤは姉の犯罪のこともどこへやら、好奇心で眼をクリクリさせた。
「その目的は、大鐘を傾斜させていたものを取り除くにあったのです。で、それを云う前にぜひ触れてお
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