聖アレキセイ寺院の惨劇
小栗虫太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)序《はしがき》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)当時|赤露非常委員会《チェカ》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)[#「正しくそれが父だと信じております」に傍点]
−−

     序《はしがき》

 聖アレキセイ寺院――。世俗に聖堂と呼ばれている、このニコライ堂そっくりな天主教の大伽藍が、雑木林に囲まれた東京の西郊Iの丘地に、R大学の時計塔と高さを競って聳《そそ》り立っているのを……。そして、暁《あけ》の七時と夕《ゆうべ》の四時に嚠喨《りゅうりょう》と響き渡る、あの音楽的な鐘声《かねのね》も、たぶん読者諸君は聴かれたことに思う。
 ところで、物語を始めるに先立って、寺院の縁起を掻い摘んで述べておくことにしよう。――一九二〇年十月極東白衛軍の総帥アタマン・アブラモーフ将軍が、ロマノフ朝最後の皇太子に永遠の記憶《メモリー》を捧げたものが、このとてつもない阿呆《
次へ
全73ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小栗 虫太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング