った先を続けますから、聞いて下さい。――私が自然の事物の中から導体になるものを選んだのは、ふとした発見からです。床の採光窓《あかりとり》から覗いて、それが外壁の回転窓にある朱線にまで達した時、後何分経てば下の動力線に触れるか? 数回に渉って実験した結果、その時間に正確な測定をとげることが出来ました。そして、その導体は瞬時に消滅してしまうばかりでなく、その出発点である鉄管には、頂上の十字架に続いているイリヤの架空《アンテナ》線が絡《から》まっているのです。さらに十字架の根元は、鐘を吊す鉄の横木を支えているのですから。さて、私は頃合を見計い置洋燈に点火して、いよいよ聖アレキセイの恐怖が起るのを待ちました。ですから、階段の中途にある壁燈をともしたのは、光がちょうどあの辺まで届くので、導体の具合を見るためだったのです。しかも、硝子に映る壁は黒いので、視野を妨げません。」と一節の区切りまで朗読が終ると、いきなり告白書を卓上に伏せて顔を上げた。
「これから先は、僕の想像に従って申し上げましょう。ところで、その導体と云うのが、何だと思います?。実に、大鐘の振錘《ふりこ》を挾んで、導体と置洋燈上の間を
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