高い利息とでは、いくら勘忍強い神様でもお憎しみにならずにはいられないでしょう。ですから、現在の父を見て昔の高い感情を考えると、私にはどうしても、それが同じ人間だとは思われないのです。」
そこで、法水の質問はいよいよ本題に転じて行った。
「ところで、鐘の音をお聴きになったでしょうな。」
「ところが、それ以前に気味の悪いできごとがございまして。四時半頃眼が醒めると、階段の壁燈が点《とも》っているのです。父は御存知の通りなので、ルキーンが戻ったかなとも思いましたが、来れば鳴子が鳴るはずです。しかし、大して気にも留めずにいたところが、間もなくこの室の扉の前辺から離れて、コトリコトリと遠ざかって行く跫音《あしおと》が、鐘楼に起りました。」
「それには、何か特徴がありましたか?」
「それが、通例の歩き方で二歩のところが一歩と云う具合で、非常に一足ごとの間が遠いのです。何か考えながら歩いているようでした。」
「すると、妙なことになりそうですね。」そう云って法水は黙考に沈んだ。が、やがて顔を上げた時には、顔色が死人さながらに蒼《あお》ざめていた。「確かあなたは、お父さんの亡霊が歩いていたと云われるの
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