き》の中に巻き込まれたような気がしたらしい。
ところが、その翌日から、フローラをめぐって、この島には激しい情欲の渦《うず》が巻き起こることになった。
その翌日――フローラがすがすがしい陽《ひ》の光に眼覚めたとき、浜辺のほうから、異様な喚声が近づいてくるのを聴いた。
見ると、彼女はハッとなって胸を抱きしめた。そこには、土人たちに取り巻かれて、昨夜運命を、船と共に決したとばかり思われたグレプニツキーが、無残な俘虜《ふりょ》姿をさらしているのだ。
首には、流木の刺股《さすまた》をくくりつけられ、頭はまた妙な格好で、高く天竺《てんじく》玉に結び上げられている。そしてこの黄色い顔に、洞《ほこら》のような眼をした陰気な老人は、突かれては転びながら、次第に岩城《いわしろ》さして近づいてくるのである。
けれども、それから始まった、横蔵の火の出るような尋問も、ついに効果はなかった。
やはり彼も、フローラと同じことを言うのみで、黄金郷《エルドラドー》の所在は、依然迷霧の中に閉ざされているのであった。それから、グレプニツキーは、土人小屋に収容されたが、賢《さか》しい紅琴は、早くもただならない、二
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