》の上に、見えない眼で、EL《エル》 DORADORA《ドラドーラ》――とまで書いたそうですが、それなり父の手を、かたく握りしめてあの世に旅立ってしまったのでした。
その RA《ラ》 が、RASHAU《ラショワ》 島の最初の一つづりであることは、すでに疑うべくもありません。しかし、それを見て父はあまりの驚きに狂ってしまったのでしたが、グレプニツキーは翌年本土にもどって、その旨をカタリナ皇后《さま》に言上したそうです。けれども、奥方様、私は乗り込んだアレウート号の中で、ふたたび、あの獣物臭い恐怖を経験することになりました。
それが、どうでございましたろうか、心臓を貫いて、硬《こわ》ばりまでした父が――しかも八尺もの地下に葬られたはずの父が、いつの間にか船に乗り込んでいて、私の前に、あの怖《おぞ》ましい姿を現わしたのですから、私は、土をかき分け、墓石を倒した血みどろの爪《つめ》を、はっきりと見たのでしたわ」
恋愛三昧
「それが、乗り込んでから、十八日目の夜のことで、戸外の闇《やみ》には、恐ろしい嵐《あらし》が咆《ほ》え狂っておりました。冷たい風が、どこからとなく隙《すき》をくぐ
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