瞬時に崩壊してしまったのだ。然し、それが超自己催眠とでも云う状態なのか、或は魅惑性精神病発作の最初数分間に現われる、強直性の意識混濁状態だったのか――孰れにしろ、その点は至極分明を欠くけれども………、兎に角斯うして、厨川君の侵害組織は遂に最後の|・《ピリオド》を打つ事が出来、意識と全感覚の剥奪に成功したのだったよ。つまり、その結果実現された怪屍体の制作が、胎龍の大脳を、厨川君が理論的に歪め変形して行った結論だったのだ」
それから筒提灯が何をしたか――法水の説明は、最終の截頭機《ギロチン》に及んで行った。
「そこで厨川君は、珠数の垂れを合掌している両手に絡めて置き、予め鋭利に研ぎ澄まして置いた提灯の鉄芯を顱頂部に当てて、それを渾身の力で押し込んだのだ。しかし胎龍は、焔々たる地獄の業火と菩薩の広大無辺な法力を、ホンの一瞬感じただけで、その儘微動もせず無痛無自覚のうちに死んで行ったのだよ。すると熊城君、その脳組織侵害法が君の所謂機構だったと云う事が判るだろう。それから僕が、その機構と殺人具とを繋ぐ不思議な型の歯車と云ったのが、取りも直さず、あの筒提灯だったのだよ」
「だが、どうしてそれと判
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