後光殺人事件
小栗虫太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)刑事弁護士である法水麟太郎《のりみずりんたろう》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)約半|糎《センチ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符疑問符、1−8−78]
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  一、合掌する屍体

 前捜査局長で目下一流の刑事弁護士である法水麟太郎《のりみずりんたろう》は、招かれた精霊の去る日に、新しい精霊が何故去ったか――を突き究めねばならなかった。と云うのは、七月十六日の朝、普賢山劫楽寺の住職――と云うよりも、絵筆を捨てた堅山画伯と呼ぶ方が著名《ポピュラー》であろうが――その鴻巣胎龍《こうのすたいりゅう》氏が奇怪な変死を遂げたと云う旨を、支倉《はぜくら》検事が電話で伝えたからである。然し、劫楽寺は彼にとって全然未知の場所ではない。法水の友人で、胎龍と並んで木賊《とくさ》派の双璧と唱われた雫石《しずくいし》喬村の家が、劫楽寺と恰度垣一重の隣にあって、二階から二つの
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