うだい熊城君、君はこの理論が判るかね。つまり、この事件を解く鍵と云うのが、二つの装置を結び付ける歯車の構造にあるのだがね。また、その中に、僕等の想像さえも付かないような、不思議な兇器が隠されていると云う訳さ」そう云い終ると、急に法水は力のない吐息をついて、
「だが、そこで問題なのは、絶命と同時に果して強直が起ったかどうかなんだよ。支倉君は強直前に犯人の手が加わったのではないかと云うけれども、僕には強直が同時でないと、屍体の合掌を説明する方法が全く尽きてしまうのだ」
 熊城は晦渋な霧のようなものに打たれて沈黙したが、検事は懐疑的な眼を見据えて、
「それで、僕はあれが気になるんだよ。ホラ、像の頭から右斜かい上に五寸程の所と、左右の板壁に二つと――それを直線で結び付けると恰度屍体の頸筋辺で結び付くんだが――節穴が三つあるだろう。元より作ったものじゃないけれども、あんな所から、非常に単純な仕組で、それでいて効果の素晴らしい、何か弛緩整形装置とでも云いたいものを、犯人は考案したのではないだろうか。勿論|現在《いま》の所では空想に過ぎないのだが、実際もし強直がすぐ起っていなかったとすると、そう云っ
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