[#「まず胎龍の精神作用を殺さねばならない」に傍点]――とは考えなかったかね。然し、そう云う超意識状態を作り出すのは、到底単一な手段では不可能な事だ。第一レトルトや力学の中にも……、勿論脳に剖見上の変化を起させる方法なんて、絶対にあり得るものではない。すると、最後に一つ想像されるのが、心因性の精神障碍を発病させる行程《プロセス》なんだ。マア空想だと笑わないで呉れ給え。よく考えれば判る事だからね。で、その去勢法なんだが……、それに非常に複雑な組織が必要だと云うのは、胎龍の精神作用を徐々に変型して行った末の最後のものを、兇器の構造とピッタリ符合させなければならないからだよ。つまり、その行程が君の云う機構であって、その結論が僕の云った悲壮な恍惚なんだ。そして、長い道程と日数を費した揚句に、とうとう犯人の破天荒な意図が成功したのだ。さぞその間に、不思議な型の歯車が喰い合ったり、独楽《こま》のような活塞子《ピストン》が動いたりした事だろうが……、そうした末に作り出された超意識が、最終の歯車と噛み合って恐怖装置を廻転させたばかりでなく、更に兇行直前の状態を、兇器が下っても中断させなかったのだよ。ど
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