ィアスやレイアティズとも関係するばかりでなく、末には諾威《ノルウェー》の王子フォーティンプラスとも通謀して、ハムレット亡き後の丁抹《デンマーク》を、彼の手中に与えてしまうのである。
 その女ホレイショの媚体は、孔雀の個性そのものであるせいか、曽ての寵妃中の寵妃――エーネ・ソレルの妖|※[#「さんずい+失」、第3水準1−86−59]《しつ》振りを凌ぐものと云われた。
 従ってこの淫蕩極まりない私通史には、是非の論が喧囂《けんごう》と湧き起らずにはいなかった。第一、女ホレイショの模本があれこれと詮索されて、或は妖婦イムペリアだとか、クララ・デッティンだとか云われ、またグラマチクスの「丁抹史《ヒストリア・ダニカ》」や、モルの「|文学及び芸術に於ける色情生活《ディ・エロティクス・イン・リテラツル・ウント・クンスト》[#ルビの「ディ・エロティクス・イン・リテラツル・ウント・クンスト」は底本では「ディ・エロティクス・イン・リテラツル ウ・ト・クンスト」]なども持ち出されて、些細な考証の、末々までも論議されるのだった。
 然し、劇壇方面には、意外にも非難の声が多く、結局、華麗は悲劇を殺す――と罵られ
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