Gれないで《タッチ・ミイ・ナット》――と叫んだのだ」
「許してくれ――成程、よく判った」そう云って検事は、皮肉な微笑を法水に投げた。
「然し、それだけでは、決して深奥だとは云われない。第一それでは、風間が吾が子を殺さねばならなかった心理が説明されていない」
「それから王妃の衣川暁子には、二つの花の名を云ったにも拘らず、折れた|雪の下《サクジフルージ》を渡した……」
検事の抗議にも関《かか》わらず、法水はずけずけと云い続けた。
「それは折れた母の愛――なんだよ。ねえ支倉君、この譬喩《ひゆ》の峻烈味はどうだね。
それから、レイアティズの小保内精一には、白蠅取草《ホワイト・キャッチフライ》と黄撫子《エロー・カーネーション》を渡して、恥じよ、裏切者――と云い渡しているのだし、
あの方と云って、その場にいないポローニアス役の淡路研二には、仏蘭西金※[#「(浅−さんずい)/皿」、237−上−5]花《フレンチ・マリゴールド》と蝗豆草《ローカスト》を渡して、復讐《リヴェンジ》、|地下から報い《アフェクション・ビヨンド・グレーヴ》[#ルビの「アフェクション・ビヨンド・グレーヴ」は底本では「アフェク
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